ホーム  >  名古屋市千種区の不動産売却・買取はSTF PropTech(エスティーエフプロップテック)  >  不動産お役立ちコラム  >  ウォーカブルな都市空間とは?中日ビルとNagoまちテラスから学ぶ

ウォーカブルな都市空間とは?中日ビルとNagoまちテラスから学ぶ
カテゴリ:不動産お役立ちコラム  / 更新日付:2025/04/07 00:00  / 投稿日付:2025/04/04 11:18

「ウォーカブルな都市空間とは?中日ビルとNagoまちテラスから学ぶ」というテキストと、楽しそうに手をつないで歩く3人の子供たちのイラスト。歩行者が快適に移動できる都市空間について、中日ビルとNagoまちテラスを例に解説していることを示唆している。
歩いて楽しい街のつくり方とは?

なぜか惹かれるあの通り、秘密は「目線」にあり? 歩いて楽しい街のつくり方


街を歩いていると、つい足を止めてしまうような素敵なお店や、美しく飾られたショーウィンドウに出会うことがあります。何気ない日常の中でも、そうした「ちょっと気になる風景」は心に残ります。でも、どうしてそこに惹かれたのか、なぜその通りは居心地がよく感じられたのか、考えてみると意外と明確な理由を説明するのは難しいものです。この記事では、そうした感覚の背景にある街づくりの工夫についてご紹介します。名古屋市が推進している「Nagoまちテラス助成制度」や、2024年に再オープンした中日ビルの1階にある店舗構成を手がかりに、「歩いて楽しいまち」のつくり方を、専門的すぎない言葉でやさしく解き明かしていきます。

まずは知っておきたい「ウォーカブル」と「アイレベル」


まず、「ウォーカブル」という言葉から始めましょう。これは英語の"walkable"をそのまま使ったもので、日本語では「歩きやすい」や「歩いていて気持ちがいい」といった意味合いを持ちます。都市計画やまちづくりの文脈では、歩行者にとって快適で、思わず歩きたくなるような環境が整った街を指して「ウォーカブルな都市」と呼ぶことが多いです。具体的には、道幅が広くて車との距離がしっかり取られていたり、段差が少なくてベビーカーや車椅子でも移動しやすかったり、通り沿いに並ぶ店のショーウィンドウがにぎやかで、歩いていて目を楽しませてくれるような場所のことを指します。

ウォーカブルなまちづくりを実現するうえで、欠かせないのが「アイレベル」の意識です。アイレベルとは、歩行者の目線、つまり人が立って歩いているときに自然と視界に入る高さのことで、一般的には地上から1.2メートルから1.6メートルの範囲を指します。建築の世界では、建物の1〜2階部分がこのアイレベルに該当します。この部分に何があるか、どんな風に見えるかが、街全体の印象を大きく左右するのです。たとえば、壁ばかりで閉ざされた通りを歩いていると、無意識に不安を感じたり、早足になったりすることがありますよね。一方で、ガラス越しに店内の様子が見えたり、テラス席で人が談笑していたりすると、その空間に親しみを覚えて、立ち寄ってみようかなという気持ちになることがあります。そして、こうした『歩きたくなる街』は、実は新しいビジネスやアイデアが生まれる土壌、すなわち『イノベーション』とも深く関わっています。ウォーカブルなまちが「イノベーションの種」を生む理由については、こちらの記事で詳しく解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

名古屋市も注目!アイレベルを豊かにする「Nagoまちテラス」


このアイレベルの重要性に着目し、名古屋市が進めている取り組みの一つが「Nagoまちテラス助成制度」です。これは、建物を建てる際に、道路との境界から少し内側に壁を後退させてできたスペース(壁面後退区域)を、もっと魅力的で居心地の良い場所に変えていこう、という試みです。ただの空き地にしておくのではなく、ベンチを置いたり、おしゃれなパラソルを立てたり、緑を植えたりして、人々がちょっと腰を下ろして休憩したり、待ち合わせをしたりできるような空間づくりを応援する制度です。市が費用の一部を助成することで、民間事業者やお店の人たちが、こうした「街なかの小さなテラス」をつくりやすくしています。こうして、お店のにぎわいや温かい雰囲気が、建物の外にも自然とあふれ出すような、開かれた空間を増やしていくことを目指しています。

まるで街と対話するウィンドウ? 新生「中日ビル」1階の試み


こうしたウォーカブルやアイレベルを意識したまちづくりの考え方は、2024年春に新しく生まれ変わった名古屋・栄の「中日ビル」にも、非常によく表れているように感じられます。特に印象的なのが、1階の建物の外周にずらりと並んだお店たちです。これらの店舗は、すべて通りに面して大きなガラス窓などを持ち、道行く人が自然と店内や商品に目を向けられるようにデザインされています。これは、単にテナントを配置するだけでなく、建物と街、そして歩行者との関係性を強く意識した結果と言えるのではないでしょうか。

実際に、どのようなブランドが並んでいるのでしょうか。名古屋初出店となる「Blue Bottle Coffee」は、スタイリッシュな店構えと開放感あるガラス張りのファサード(建物の正面部分や見た目のデザインのこと)で、誰でも気軽に立ち寄れる雰囲気を醸し出しています。その隣には、地元・愛知のフルーツを使ったスイーツで人気の「おかしな大地」、フランスの有名パティスリー「MICHEL BELIN ESSENTIEL(ミシェル・ブラン・エッセンシエル)」など、甘い香りと美しいショーケースで人を引きつける店が並びます。さらに、アスリートや健康志向の人たちに支持されるフットウェアブランド「HOKA(ホカ)」も、この並びに名を連ねています。

加えて、英国発の高級ボディケアブランド「モルトンブラウン」や、アメリカの老舗ブーツブランド「RED WING(レッド・ウィング)」、そしてフランスの高級革靴ブランド「Paraboot(パラブーツ)」など、国内外の感度の高いブランドが1階に集まっています。生活雑貨を扱う「Rust Sakae(ラスト・サカエ)」も含め、これらの店はジャンルこそ異なるものの、共通して「都市の洗練された暮らし」を象徴するような存在です。

これらの店舗群をひとつの文脈で捉えるなら、それは「まちに開かれた都市型セレクトショップ」のような位置づけになるかもしれません。ただテナントを埋めただけではなく、「歩行者の体験をどう豊かにするか」を起点にブランド選定がなされているように感じられます。また、それぞれの店舗が外からの視線を受け止めるようなデザインになっているのも特徴的です。ショーウィンドウが大きくとられ、照明も工夫されており、歩行者の目を楽しませる工夫が随所に見られます。これはまさに、アイレベルのデザインを意識した都市空間づくりの一例といえるでしょう。

こうした取り組みは、従来の百貨店とは明確に一線を画しています。たとえば、松坂屋や名古屋三越といった大型商業施設では、ファサードの多くが閉ざされており、歩行者が店内の様子を外からうかがい知ることはあまりできません。また、テナント構成も「館内誘導」が前提となっており、建物の中に入ってから初めて各ブランドと出会うスタイルが一般的です。それに対して中日ビルの1階は、まるごと「都市と対話するウィンドウ」として機能しています。そこには、都市空間全体をどう活性化させるかという視点がしっかりと据えられているのです。

歩行者の目線で街をつくるということ。それは単に建物の設計を工夫するだけではなく、制度設計、ブランド選定、空間演出までを包括的に考える必要があります。中日ビルの1階に展開されている試みは、その理想を具体的な形にした好例であり、名古屋市が目指す「人にやさしいまちづくり」の現在地を示しています。次に中日ビルの前を通るときは、ただお店を眺めるだけでなく、その背景にある街づくりの意図に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

名古屋のまちづくりと不動産の未来:専門家にご相談ください


この記事でご紹介したように、ウォーカブルなまちづくりやアイレベルへの配慮は、街の魅力を高めるだけでなく、不動産の価値にも影響を与える可能性があります。名古屋市千種区・昭和区・瑞穂区・名東区を中心に不動産売却や相続、空き家活用をお考えなら、地域に根ざし、最新の動向にも精通したSTF PropTechにご相談ください。

私たちは、宅地建物取引士、税理士、FPなどの専門家チームが、不動産、税務、資産運用の多角的な視点から最適なご提案をいたします。仲介売却から直接買取、相続問題まで、お客様一人ひとりの状況に合わせた解決策を、PropTech(不動産テック)も活用しながらワンストップでサポート。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。



参考資料

監修者情報

佐治 英樹(さじ ひでき)
佐治 英樹(さじ ひでき)
税理士(名古屋税理士会), 行政書士(愛知県行政書士会), 宅地建物取引士(愛知県知事), AFP(日本FP協会)
趣味は、筋トレとマラソン。忙しくても週5回以上走り、週4回ジムに通うのが健康の秘訣。

    ページの上部へ